人財
2013年07月29日
"人財"について考えてみたい。
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」 戦国最強の軍団を率いた武田信玄が世に残した有名な言葉である。
「社員満足の追求こそが、継続の源泉」と考えている坂本光司教授は、「経営の三要素は、一に"人財"、二に"人財"、三に"人財"であり、ほかのものはそのための道具にすぎない」と言い切っている。
「企業は人なり」という言葉もあるように、企業の存続と発展に"人財"が重要であることに対しては、誰も異論はないだろう。にもかかわらず、"人財"の確保と育成そして定着に苦労している経営者が、いかに多いことか...。
先だっても、ある企業で離職率の高さが問題となった。「入社して3年以内に辞められると、一人当たり350万円の人件費ロスが生じる」と、某人事コンサルのプロから聞いたことがあるが、相当のロスである。
離職の原因を聞くが、釈然としない。辞める側に事情があるのだろうから、「辞めた人に直接聞いてみないと分からない」ということだろう。「辞めていく人を引き止めても徒労だから...」という無関心もあって、なおさら事情は霧の中。
端から辞めるつもりで入ってくる人は一人もいないはずだから、はやり「入ってからの職場環境との関係性の問題である」と考えてみる必要がある。つまり、職場という環境とのミスマッチ...。
その最大の要因は、人間関係だという。そのベースは信頼...。何を絆にして信頼し合えばいいのか、そこが分からないのである。答えは、はっきりしている。その組織の理念・目的を共有するしかないのである。
しかし、その共有すべき理念・目的が曖昧...。しょうがないから、上司と部下がお互いの人間性を探り合う。そして、相容れない性分に気づき、ぶつかる。
信頼とは、お互いが共通して信じ合えているもの(理念・目的)を確認できたときに、それを絆として生まれるものなのだ。(海外では、お互いに、日本人というだけで安心してしまうなど...)
卓越した"人財"を欲するならば、まずは信頼のベースを明確に指し示すべきだ。それがない限り、離職の責任はすべて組織にある。「去るものは追わず」と切り捨てるのは、それからの話だ。
"人財"とは、その組織の理念と高い要求に応え、うまく適応して活躍し、自らの主体性を伸ばしていける人をいう。勿論、育つ環境を整えるのはトップの責任である。