共存
2015年10月05日
チャレンジには、少なからず自己犠牲が伴う。なぜなら、自らが慣れ親しんだ快適ゾーンを捨てざるを得ない状況が生じるからだ。
仕事においても、そうだ。環境の変化が激しい今日、つねに新しい、未来の仕事をつくることへのチャレンジをしておかない限り、未来が描けなくなる。そのとき、最大の敵となるのが今抱えている仕事、つまり、日常業務なのである。
現状における、自らの存在のベースであり、生活の糧として機能している日常業務と、どう折り合いをつければいいのか・・・。いろんな考えや思惑が生じる。当然のことながら、「迷い」が生ずる。
以前に、「優れた経営者とは、現状に甘んじることなく、つねに問題(リスク)をつくりだしている人のことである」という話を聞いたことがあった。何も問題が浮かばないことこそ、真の問題だという。蓋し、名言である。
経営者とは、つねに未来へのヴィジョンを描き続けることができる人である。その意味において、ここでいう問題とは日々に解決を迫られる目先の問題ではなく、「あるべき姿と現状との差」をいかに埋めるかという本質的な問題であるといえよう。
多くの人たちが、日々の多忙やリスクを避けたいという理由から、「短期の楽観、長期の悲観」から脱却できないでいる。まさに、これがバブル崩壊後、ずっと日本を覆いつくしている問題の本質なのである。
難しい問題の核心にはつねに、「二律背反性」ともいえる対立・矛盾する考え方がある。つまり、こちらを立てればあちらが立たないという二項対立の関係である。「Aを取れば、Bを捨てざるを得ない」という、どちらかを切り捨てるというやり方をすれば、手っ取り早い解決にはなるのだが、根本的な解決にはなっておらず、もぐら叩きをやり続けるしかないのである。
では、どうすれば根本的な解決を導くことができるのか?対立ではなく、"共存"を考えるのである。「あるべき姿」と「現状」を対立ではなく、"共存"関係で捉えるのである。「現状」とは、過去に何を思考し、行動したかの「結果」である。つまり、「現状」をしっかりと把握することによって、「結果」の「原因」が見えてくる。
そうすると、「あるべき姿」を実現するために、どのような原因を取り除き、またどのような原因を整えればいいのか、明らかになってくるのだ。つまり、「あるべき姿」と「現状」をいかにバランスよくするか、つまり、"共存"させていくかが課題となる。
「迷い」は未来の源泉である。択一による性急な結論ではなく、粘り強く"共存"の道を思考すべきである。