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考える言葉

リスク

2015年11月09日

 「21世紀の世界とは、変化の激しい、リスキーな時代である」といわれて久しい。内外の情勢を観ていても、まさにその通りで、経営の舵取りの難しさを実感されている経営者も多いことであろう。
 「経営における"リスク"とは何か?」を改めて整理してみたい。
 私たち職業会計人の専門領域の一つに企業会計がある。その会計とは、本来、「計算をする」という意味であるが、「何を計算しているのか」というと、「"リスク"を計算している」のだというのが、小生の持論だ。
 会計には大きく、過去会計(=制度会計)と未来会計(=意思決定会計)の領域があると考える。
 過去会計は、過去の経営活動の結果をまとめ、利害関係者への報告を目的としている。利害関係者への"リスク開示"をきちんとすることによって社会的な信頼関係が生まれるわけだ。一方の未来会計は、経営者の意思決定をサポートするための会計であり、意思決定に伴う"リスク"を事前に計算することによって、安心して「"リスク"を取りにいける状況」をつくり出すことに意義がある。
 今の経営の困難さは、現状に留まることができない環境に起因している。つまり、変化に適応できるように自己革新するか、または自らが変化を起こし、その中心的な役割を担うか、その勇気を問われているのである。
 「"リスク"を冒さざるを得ない」(受動的リスク)というのではなく、「"リスク"を取りにいく(take)」(能動的リスク)という決断であり、それに伴う"リスク"を自らの責任で背負う覚悟である。
 そのためには、大義が必要だ。
 自分のことばかりを考えている人は無難なところに留まろうとするであろうし、"リスク"を避けようとするであろう。しかし、世の中全体のことを考えて生きている人は、どうすれば世の中がもっと進化するであろうか考える。だから、「"リスク"を取る」という勇気が生まれ、何かをやってくれそうな気迫が漂うのである。
 ここでいう"リスク"とは、「あるべき姿-現状=差」をいう。あるべき姿(大義)をもって生きている人は、その差(=問題すなわち"リスク")をどう埋めるかをつねに思考し、行動するであろう。つまり、彼らにとっての"リスク"とは、自らが掲げた目標のことである。ゆえに、必ず実行し、達成するまでやり続ける覚悟ができているのだ。
 そして、小生がいう未来会計とは、大義に生きる人が背負おうとしている"リスク"を事前に計算し、必ず達成できるように支援したいと想い、念ずる会計である。

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