場のマネジメント
2021年09月17日
前回の"考える言葉"シリーズ(21‐34)で紹介した『経営を見る眼』(伊丹敬之著)の中で、"場のマネジメント"という概念を提唱してあるので、考えてみたい。
周知のとおり、従来の経営システムは、主にタテ(上下関係)の影響をきちんと与えることを目的とする仕事の「仕組み」の枠づくりである。
しかし、世の中はタテばかりではなく、ヨコもある。
そして、著者のいう"場のマネジメント"とは、「仕事のプロセスの中で人々の間のヨコの相互作用を活発化させ、導くような枠づくりである」という。
氏は、「場」を次のように定義している。
「場とは、人々がそこに参加し、意識・無意識のうちに相互に観察し、コミュニケーションを行い、相互に理解し、相互に働きかけ合い、相互に心理的に刺激をする、そのプロセスの枠組みのことである」
つまり、場とは、人々のヨコの相互作用のプロセスの「容れもの」だといえる。このように考えると、"場のマネジメント"の原点は、チェスター・バーナードの組織論の考え方にあるといえるだろう。
バーナードは、組織を「協働行為の体系」であると定義し、その成立要件として次の3つを掲げている。
①共通の目的、② 協働意欲、③コミュニケーション。
つまり、関係性思考の価値観(=統合の価値観)をベースに、組織を構成するメンバーの主体性・自律性を促し、自己組織的にゴールを目指して動いていくような場を生成し、「場のかじ取り」をしていくこと。それが、"場のマネジメント"の意図するところであろう。
"場のマネジメント"の背後にある人間観は次の三つであるという。
①人間はつねに周りを見ている
②人間は実に多様な情報メディアへの感覚能力を持っている
③人間は個人ではあるが、全体という名の衣をまとった個人である
場に関する以上のような考え方を十分に考慮して、組織の中で、人々の間の「情報的相互作用」と「心理的相互作用」が十分に機能するようにマネジメントする必要があるだろう。
こうした「場の生成」により、自己組織化の機運が高まり、場にエネルギーが生まれれば、一人ひとりがもつポテンシャルが活かされる組織となるだろう。
自己組織化のためにも、"場のマネジメント"を深く考えてみたいと思う。
"考える言葉"シリーズ(21‐35)