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考える言葉

無為のリスク

2022年04月25日

 最近、気になる言葉の一つにピーター・F・ドラッカーが示唆している"無為のリスク"がある。
 ドラッカーは次のように述べている。
「事業においては、リスクを最小にすべく努めなければならない。だがリスクを避けることにとらわれるならば、結局は最大にしてかつ最も不合理なリスク、すなわち"無為のリスク"を負う」(『創造する経営者』)。
"無為のリスク"とは、未来や機会に挑戦しないリスクをいう。
「現状維持は衰退である」と言われるほど変化の激しい今日、誰しもが変化というリスクから逃れることはできない。だがしかし、傍観者である人が意外と多いのではないかと危惧する。
「何もしないということは、環境の変化に身を任せ、自ら陳腐化させられる道を選択しているのに等しい」という。つまり、結果として、不合理で最大のリスクを背負うことになると指摘している。
そのためにも、ドラッカーは、意思決定に伴う"リスク"の性格を見極めるべきだとして、4つの"リスク"に分類している。
 ①「負うべきリスク」
事業の本質に付随する"リスク"で、携っている以上回避できない"リスク"。
 ②「負えるリスク」
機会の追求に失敗しても、企業の存続に影響がないレベルの"リスク"。
 ③「負えないリスク」
負える"リスク"の反対のもの。他に、成功を利用することができない"リスク"。
 ④「負わないことによるリスク」
無為のリスクの典型。革新的な機会を失い、自らを陳腐化させてしまう"リスク"。
 トップ経営者の本質は、組織の存続と発展のために「未来や機会に挑戦することだ」
と考える。故に、トップの意思決定には不確実性に伴うリスクがつねに存在しているといっても決して過言ではない。
 「より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、企業家としての成果を向上させる唯一の方法である」というドラッカーの金言を肝に銘じておきたい。
 そのために必要不可欠ものが利益の蓄積である。そして、その利益を得るためにはリスクを避けては通れないのである。
 "無為のリスク"とは、「ぬるま湯のカエル」のようなものだと、心得ておきたい。

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