二律背反性
2022年08月12日
先週末(8月5日)、第93回MAPサロン(大手町サンケイプラザ)が開催され、久々に講演をさせてもらった。テーマは、『未来会計の真髄~未来からの逆算が会社を大きく変える』である。
未来会計とは、「経営者の意思決定をサポートし、持続可能な未来を構築するに必要な会計の体系」をいう。つまり、「未来を創造するための会計」と表現してもいいだろう。その真髄を一言でいうと、「目標設定にある」といっても過言ではない。
企業間の格差は、マネジメント力の差である。そして、「マネジメント力の差は目標設定の良否で決まる」と、P・F・ドラッカーも示唆している。
事業における目標設定の視点は幾通りもあるが、ドラッカーは重要な視点として次の6つを挙げている。
① マーケティング
② イノベーション
③ 経営資源
④ 生産性
⑤ 社会的責任
⑥ 費用としての利益
このように、事業を展開していく中で掲げる目標は一つではない、複数に及ぶことになる。そこで留意すべきことは、"二律背反性"の問題である。つまり、「こちらを立てれば、あちらが立たない」という、両立しない関係のことである。
では、"二律背反性"の問題を解決し、緩和させるためにはどうしたらいいのだろうか。
「迷ったら、原点に帰れ」という言葉がある。目標は、目的を達成するための手段・方法として設定されるものである。「目的は一つ、無数にある手段で争わず」という言葉がある。まさに、言い得て妙である。
マネジメントの目的は、唯一、顧客の創造にあるとドラッカーは述べている。だとすれば、その目的に沿って、上記の6つの目標は相互補完し合う関係で設定される必要があるといえよう。
以上のように、仮に"二律背反性"の問題が生じているとすれば、共有すべき目的を見失っている証拠であると考えて、対処すれば解決できると確信している。
特に、マーケティング(現在の顧客)とイノベーション(未来の顧客)の二点に関しては、"二律背反性"の問題について十分に留意してかかるべきだと思う。