競争優位
2023年02月03日
最近読み直している本に、『持続可能な未来へ』(ピーター・センゲ)がある。2010年初版なので、もう十数年経つが、何度読み返しても新たな気づきを提供してくれる良書である。
工業化に象徴される20世紀の経済成長は、環境汚染や社会問題(貧富の差など)などの副作用をもたらした。まさに21世紀は、その繁栄の代償を払わざるを得ない状況にあるという。
本書の問題提起は、繁栄の代償にどう対処し、個人と組織は「持続可能な未来を築くために」何をなすべきかを問うているのだ。
そのためにまず、私たちに求められているのは、経済(すなわち、利益)を最優先する従来の考え方、価値観を改めることである。つまり、「採る、使う、捨てる」という使い捨ての考え方からの脱却である。
世の中の価値観の変化は、「持続可能な未来のため」には、地球環境こそが何よりも大きな存在であり、そのなかに人間社会がある。そして、経済や産業などは、さらにずっと小さな存在にすぎず、環境と社会、両方の一部をなしている。
私たちは「経済は自然の100%子会社のようなものであって、決してその逆ではない」という事実に目覚めるべきだという。
確かに、社会が安定して活力がみなぎっていないかぎり、経済の健全性はあり得ないし、ビジネスもうまくいくはずがない。
世の中の変化を踏まえ、そこに機会を見ることができる企業が、いつの時代にもリーダーシップを発揮し、"競争優位"に立ち、イノベーションや成長を左右してきた事実がある。
今や、繁栄の代償である環境問題や社会問題にきちんと向き合うことが、私たちにとって"競争優位"を左右するテーマになっているのではないだろうか。
そして、環境や社会は、「使い捨て」ではなく「循環型経済」の確立を求めているのである。すでに、多くの優良企業は、この考え方を重視し、自社の企業イメージ、ブランド力を高めるような戦略を描き、チャレンジしているという。
「循環型経済」に取り組む真摯な姿勢が、競争優位を左右するというのだが、その仕組みを構築するには次の4つのポイント押さえる必要がある。
① 循環視点を持つこと(廃棄を前提にしない)、② 回収網を構築すること、
③ 他者との連携・協業を進めること、④ 社内外へ発信を行うこと。
「持続可能な未来へ」の取り組みが、"競争優位"に働くのであれば一石二鳥である。
"考える言葉"シリーズ(23‐04)