「経営者は"耳学問"の大家になれ」(『経営者を育てるアドラーの教え』岩井俊憲 著)という言葉がある。
"耳学問"とは、若い頃からよく耳にした言葉である。"耳学問"の大家になるということは、耳がいつも開かれているということだ。読書をし、学校で受講するだけではなく、人の話をよく聴くことも学問だということだ。
人には二種類あるとよく言われる。一つは「話し上手」で、もう一つは「聴き上手」だ。自分にとってどちらが得かというと、もちろん後者の聴き上手である。
考えてみると、人は話をしてるときは、自分の知っていること(情報)を場に提供していることになるが、聴いているときはその逆である。他人の考えや情報を得ていることになる。
"耳学問"の大家、つまり「聴き上手」には、次のようなメリットがあるという。
① 情報が豊かになる
② 確実に人に好かれる
③ 相手への理解が深まる
④ 部下がやる気を出す
よく聴く人は、"耳学問"の大家になれるし、人に好かれるし、相手の問題解決の支援者になれるのだという。
故・松下幸之助さんといえば、まさに"耳学問"の大家だったという。毎日が多忙をきわめる日々だったというが、部下たちの意見をテープレコーダーに吹き込んでもらい、
車内や寝室などでも聴いていたという。
アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓に刻んである、次の墓碑銘の言葉も有名である。
「己より賢きものを近づける術を知りたる者、ここに眠れり」。
経営者はオールマイティである必要はない。部下の話をよく聴くことによって信頼さ
経営者はオールマイティである必要はない。部下の話をよく聴くことによって信頼さ
れ、人を動かすことができればいいのだ。
帝王学の教科書といわれている『貞観政要』に出てくる唐の太宗のように、昔から優れたリーダーは、自分に諫言してくれる側近を置いていたという。
今日、事業承継がさかんに言われているが、創業者から事業を引き継ぐ立場にある後継者にとって、"聴き上手"であることは自分の強みになりそうだ。
また、今日の不透明かつ多様化した時代環境において、多くのことに対してスピード感をもって学ぶためにも、"耳学問"の大家でありたいと思う。
"考える言葉"シリーズ(23‐08)