徳
2023年04月14日
久しぶりに、ワタミの渡邉美樹氏の講演(MAPサロン主催)を聴く機会を得た。
いつものことながら、氏の志の高さとその実行力に感服させられながら聴き入ってしまった。
『withコロナ時代を生き抜く経営とは?』というテーマで90分間、持論を熱く語ってくれた。一言でいうと、どんなに苦しい状況下でも、夢・志を高く持って、やり続けることの大切さを、さわやかな口調で語って頂いたと思う。
今回、氏の講演を聴きながら、以前に読んだ『論語と算盤』(渋沢栄一著)の内容が思い浮かんだ。帰宅し、書棚から本を取り出して読んでみると、符合することが多々あり、改めて氏の凄さを確信した。
その凄さとは、学んだことを即実践し、自らの血肉にしているところだと思う。
『論語と算盤』は、折に触れて何度も読み直している本の一つであるが、少し内容について触れてみたい。
『論語と算盤』は一言でいうと、「道理と事実と利益は必ず一致するもの」であることを前提に、渋沢栄一の信条とするところを語り綴ったものであろう。
「モノの豊かさとは、大きな欲望を抱いて経済活動を行ってやろうという気概がなければ、進展していかないものだ」という。
ゆえに、「実業とは、多くの人に、モノが行きわたるようにするなりわいなのだ」という。
そして、「国の富をなす根源とは何かといえば、社会の基本的な道徳を基盤とした正しい素性の富なのだ」と述べている。
この考え方をベースに、『論語』と『算盤』というかけ離れたものを統合させたのが『論語と算盤』という思想だったのであろう。
資本主義は、利潤追求という欲望をエンジンとして前に進んでいく一面がある。しかし、そのエンジンはしばしば暴走し、大きな惨事を引き起こしていく。まさに、日本のバブル期がそうであった。
だからこそ渋沢は、その暴走に歯止めをかける枠組みが必要だと考えたのである。その手段が『論語』の教えであったのだ。
事業の存続・発展には、利潤の追求は欠かせないものだ。しかし、持続的な成長を成し遂げるには、もう一つの要件が必要だ。それが、"徳"を積むという習慣であると考える。
渡邉氏は、それを、自分の本分を見極め、夢・志を立て、その実現のために覚悟を決めるのが唯一の策だと熱く語っている。
"考える言葉"シリーズ(23‐13)