共創
2023年07月31日
5年ほど前に購入した本、『渋沢栄一人生を創る言葉50』(渋澤健 著)をバリ旅行中に再読した。「明治150年」(2019年)を迎えるにあたって、執筆された本らしい。
渋沢栄一(1840~1931年)と言えば、一昨年の大河ドラマ『青天を衝け』の主人公であり、「日本の資本主義の父」といわれた人で、明治・大正時代に活躍した数多くの実業家の中でも、群を抜いた人であった。
栄一は、百姓の生まれだったが、周囲の影響から尊王攘夷の思想に目覚め、倒幕活動に走った。ところが、あるご縁で一橋慶喜に仕えることになり、彼の人生は一変する・・・。幕府の使節団員として欧州に行き、様々な刺激を受けて、近代化の種を持ち帰って先覚者として活躍する。
日本初の銀行である第一国立銀行をはじめ、約500社の設立に関与した実業家となる。また、およそ600の大学、病院、社会福祉施設など非営利の組織や活動の設立に関与した社会起業家でもあった。
栄一の著書である『論語と算盤』でも分かるように、彼の経済思想は先見性に富んだ考えであり、道徳経済合一説を説いて、彼にとって事業の繁栄は目的ではなく手段であった。事業が繫栄すれば、人々は富み、国力も高まる。この国家論こそが、栄一の行動指針であった。
人間は社会の中で生きる存在である。だから、「人は社会の恩恵を忘れてはならぬ」
という思想こそが、人間の想像力を逞しくし、これは自分が経験していない時空に飛躍できる力を生み出す。
利己は自分の体験しか眼中にない。一方、利他には飛躍の力が必要だ。自分自身ではない他人の考え、気持ち、立場を想像して、自ら行動することが利他だからである。
渋沢は、「想像力をもたらした利他の精神があったから、人間は文明社会を他と"共創"できたのだ」という。「共に創る」こと。渋沢栄一の思想の核心に、この"共創"という精神があったのだという。
小生も、創業以来大事にしている言葉の一つに"共創"がある。そして、それはお互いの言動に責任を持つことでもある。
上記の渋澤の本を再読して、自他非分離という統合の思想・価値観をIG会計グループの原理原則とし、"共創"の精神を広く培っていける環境を大事にしていきたいと改めて確信した次第である。
"共創"の精神をベースに語る渋沢栄一の言葉は、大変、有意義である。
"考える言葉"シリーズ(23‐27)