細口巨耳
2024年08月27日
もう30年程前に出版された書物であるが、『リーダーの生き方』(飯塚昭男 著)という本がある。90年代で、バブル経済が崩壊し、トップのリーダーシップが強く問われる時代の始まりだった。
先行き不透明な難しい時代の中で舵取りをしなければならない経営者にとって、情報収集力は必要不可欠な要因だったといえよう。
情報の基本動作は不変で、それは「深く読み、深く聞き、深く叩く」ということだ。
この三つの基本動作の中でも組織リーダーには「聞くということ」が重大な要素になるという。組織を動かし、人心をつかみ、時代の変化に対応するには「体全体を耳にする」必要がある。
「良きリーダーシップは、まず聞くことから始まる」と言う。
"細口巨耳(さいこうきょじ)"とは、「余計な口を挟まず、相手から話を聞き出せ」ということである。
古くから中国に伝わる言葉で「巨口細耳」という言葉がある。人の言うこと聞かぬ王侯の頑なな態度を嗤ったものである。つまり、口ばかり大きく、わめき立てるが、耳はことのほか小さく、他人の意見に全然耳をかさない状態を指したものだ。
それを上手く、使い変えて、「経営者は"細口巨耳"であらねばならぬ」といった経営者がいたという。
経営の神様と言われた松下幸之助氏の成功の秘訣の一つとして、「幸之助さんは人の話を聞く名人だった」とよく言われる。しかも、素直な心でしっかりと聞き、一方で深く考え、そして考えながら聞いたという。まさに、"細口巨耳"・・・。聞き上手だったのである。
聞き上手のポイントとして、次の4点が考えられる。
① とにかく黙って聞くこと
② 本音で聞くこと
③ 問題意識を持って聞くこと(自分の座標軸の問題)
④ そして最後は、「深く考える」こと
バブル崩壊後、失われた10年が、いつの間にか失われた30年と言われるようになった。時代環境はさらに多様化し、混沌とした時代が深まっている。
経営はさらに、リーダーシップが問われる環境にある。そのためにも、リーダーは傾聴力を高め、先見力を磨き、信念を持って意思決定をすることが求められるいる。
全身を耳にして情報を集めるためにも、"細口巨耳"でありたいとも思う。
"考える言葉"シリーズ(24‐30)